Archive for month: 7月, 2014

「せんせい」と「おさかな」

ばら4

本来は、3歳くらいの幼児が「チェンチェイ」とか「オチャカナ」と言うのは微笑ましい状況に思えるものです。しかし、この頃の年少組(3歳児集団)に「チェンチェイ」と言う子どもが入ってくると、「赤ちゃんことばだ」とはやし立てられる始末です。本人は訳が分からず、途方に暮れるばかりでしょう。
音声作りで舌には大きな役割りがあり、口蓋への接触の仕方でサ行、タ行、ナ行、ラ行を構音しなければなりません。これには舌の運動神経の発達と耳の音声弁別能力の敏感性がかかわってくるのです。大人が試してみてもナ行とラ行はどんな風に舌の接触が異なるのか、よくわかりません。それほど微妙な運動神経が、正しい発声には必要なのです。
全般的な発達が平均的であれば、学校に入るまでに(6歳)サ行もラ行も正しく発声できるようにはなります。しかし、周囲から揶揄されたりして本人が気にしていたら、耳の弁別力と舌の動きを専門家に相談し、指導を受ける必要があります。
また、ことばの発音の遅れが身心の全般的な発達の遅れと連動している場合には、言葉に限局せず、全身の発達を促す働きかけを考えていかなければならないと言えます。

日本語は苦手、だけど英語は得意

紫の花

ことばが発達していく段階として、まず要求することばから出現します。お菓子やジュースなど好みのものは身につきやすい単語なのです。
この人は「ママ」ですと言うより、可愛いがってくれる、抱っこしてくれる、おいしいものをくれるのが「ママ」という発音のようです。
要求することばは、いわゆるコミュニケーションにはなっていません。やり・とりができ、意志交換ができてこなければなりません。
コミュニケーション力が対人関係を形成し、社会性を育てていくことになるのです。自閉症などの広汎性発達障害の方々は、多くの場合、ことばが使えるのに極端にコミュニケーションを苦手としているのです。
ところが、日本における伝統的な英語教育は、「ことば」の学習であるはずなのに「英会話」には繋がっていませんでした。現在、小学校などに導入されている英語学習は、楽しく、そしてコミュニケーションを念頭に置いているのです。
しかし、大学受験をゴールとする英語学習は、依然として文法・読解・英作文を中心として進められます。早期から「楽しい英語」でなく「受験英語」に取り組ませると、英語が中学・高校で高得点を獲得して得意となります。
もし、コミュニケーションを主体とした英語学習となったら、優秀な記憶力のよい発達障害の方は進学できなくなってしまいます。
発達障害の方の支援を続ける限り、これまでの日本の英語教育を批判することはやめておくつもりです。

大人になった自閉症

黄色いバラ

職場ではA君は間違いも少ない良い作業員として定着していました。指示をきちんと理解し、必要な発語も明瞭でした。そして、上司などの指示にも速やかに対応することができました。
ある日、機械の調子がよくないので何人かが集まって検査をしましたが、どこが不調なのかわかりませんでした。そこで、専門家の主任にチェックしてもらうことにしました。
先輩がA君に「主任を見てきて」と指示したところ、A君は「ハイ」と答えて事務所に向かいました。間もなくA君は戻ってきて、「見てきました」と報告しました。
実は、主任が居たら連れてこなければならない事態でしたので、A君は先輩から「役立たずめ」と叱られてしまいました。
先輩の指示には正しく反応できましたが、文脈の理解ができていなかったのです。つまり、「主任が居たら連れてくる」を把握できなかったということになるのです。職場のみなさんには、ぜひご理解をいただきたいと思います。