Archive for year: 2013

大晦日にあたり

『カウンセリング』が一般に口にされるようになって60~70年と経過してきました。
カウンセリングというと、「全面的な受容」によって相談にいらした方の「自発的な解決力を甦(よみがえ)らせる」ものと信じられてきました。確かに、普通の悩みや進路の迷いなどには有効でした。しかし、カウンセリングの対象が「いじめ」「不登校」「落ちこぼれ」「発達障害」と拡大してくると、肯定も否定もしない「頷(うなずき)」だけではどうにもならず、「行動変容」「環境変容」が積極的に取り入れられるようになりました。
自律訓練(リラクゼーション)、行動療法(オペラント法)、そして親御さんへの合理的なコンサルテーションなど、いろいろな方法が開拓されてきました。
お子さんの抱えている個別的な問題を解決するためにはどのようなアプローチが適切か、研究所では的確なアセスメントに基づくアドバイスを行っております。来年もよろしくお願いいたします。

P1010648
P1010658

「お世辞・おべっか」と「褒める」こと

こどもの「躾 しつけ」には、「叱る」と「褒める」をうまく使い分けることが必要と言われています。指導・訓練でも同じことが言えます。しっかり「褒めることが大切ですよ」と親御さんにアドバイスすることがよくあります。ところが中には「子どもにお世辞なんか・・・」と難色を示す方がいらっしゃいます。そんなときは、「褒める」から「真心 まごころ」を引き算すると「お世辞」になることを説明することにしています。
a0100_000023

『自閉症』とは?

「自閉症」というのは「閉じこもっている」のでしょうか?

文字通りに見れば「自ら」「自分の殻の中に」「閉じこもっている」ことになるでしょう。しかし、50年以上も「自閉症」の方々を応援してきた経験からすると、初めの頃はいわゆる専門家と言われる人(たとえば精神科医)でさえも「こんなに走り回って元気な子は自閉症ではない」と広言していました。

「コミュニケーション(ことばでも表情・動作でも)がとりにくい、人との関係が作れないという方の中で、その症状が重篤(おもい)であるかどうかを判断しなければなりません。
P1010591

緘黙とは

P1010594

「緘黙(かんもく)」というのは、全く口を利かないか、または利けないことを言います。先日、専門機関で「場面緘黙」と診断を受けた小学生のお子さんを連れて、ご両親が相談にみえました。「選択(場面)緘黙」というのは、家では普通におしゃべりができるのに幼稚園や学校では口を利けないことです。間違われやすいケースは、他児との交流が乏しいことで集団の場面で引っ込み思案で口が利けないことがあります。これらのケースは、集団に慣れてくれば自然に口が利けるようになります。一方、「選択緘黙」は、同じ保育園でほぼ同じ集団にいて3年間に一言も話さなかった方がいましたが、家では自由におしゃべりしていたのです。
相談にみえた小学生は、予定された発表はきちんとできるし、国語の時間に指名されればしっかりと音読できるとのことでしたので、仲間との会話を援助していけば引っ込み思案は解決するでしょう とアドバイスしました。結局、「場面緘黙」は誤診ということになります。

発達障害は病気なの?

「発達障害者支援法」には「脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」が発達障害である と定められています。
本来、「病気」というのは「どこが」「どのように傷があるとか炎症を起こしているか」「その結果としてどんな症状が生じるか」がはっきりしていなければなりません。「発達障害」ははっきりしない原因によって生じた「行動」によって決める病気ということになります。
だから、普通の意味での「病気」とは違います。ほとんどすべての「発達障害」は、「手術をする」とか「薬を処方する」といった手を使えません。しかし、「行動」が普通以上に過剰であったり、「音」などの刺激に普通以上に過敏であったりするために、平均的な一般の人々に困ったもんだと感じさせることになります。
彼らの特徴をしっかりととらえて、環境の方を変えてみると、問題とされている「行動」が個性として輝いてくるのです。機械的であるにせよ、強烈な記憶力をどう生かすか。几帳面すぎるほどの几帳面さをどう生かすか。この考え方は「病気」ととらえるのではなく、「特性」「個性」としてとらえる考え方といえるでしょう。
不肖私は、「自閉」は「個性」と考えて相談を受けてきましたし、これからもその考え方を続けるでしょう。

P1010378

お父さんが非協力的な家庭が多いって本当?

P1010439

ご両親がまず、「発達障害」があるとされるお子さんの行動を正しく捉えることが肝要です。
お母さんは、講演会に出席したり相談機関で指導を受けたりして、お子さんの行動を理解し、対応の仕方を勉強しておられることが多いようです。お父さんはどうでしょうか。多くのご家庭ではお父さんは逃げ腰で、「お母さんに任せる」と回避していることが多いようです。
家庭やそして社会を変えることは並大抵の仕事ではありません。現実に直面することを家族全員が覚悟してのぞまなければなりません。
たとえば、お母さんが「心」「行動」を担当し、お父さんが「体」「あそび」を担当するなど、それぞれが何を分担すればどんな変化・メリットがあるのか、専門家にアドバイスを受けることも一つの方法と言えるでしょう。

問題の「ある」「なし」の見分け方

P1010403

「発達障害」のある方の示す個性的な行動は、ときに一般の人には理解を越えるものもあります。それらが問題行動(症状)なのか、そうでないのかを見分ける方法はあるのでしょうか。
これは当人の問題ではなく、親や先生など、周囲の人が決めつけることであることに注意しましょう。最大公約数的な枠の中に当てはめようと周囲の方々はするものです。そこからはみ出すことがイコール”問題が「ある」”と決めつけてしまうのです。
もっとも良い解決法は、環境を変えて、個性的な行動に適合するようにしてしまうことです。しかし、ものには限界もあり、そう勝手に動かすことができないことも事実です。だから、部分的に修正して個性をつぶすことなく社会・集団参加ができるように応援することが大切なのです。

どんな症状(行動特性)があるの?

P1010388

「発達障害」と言われたお子さんには、どのような症状(行動特性)があるのでしょうか。
いろいろあります。例えば、「自閉性障害」と言われている方々は記憶力が抜群によい方とか、孤独を愛する方などがおります。映画「レインマン」でダスティンホフマンが演じていたのがそれです。お兄ちゃん、お姉ちゃんを育ててきたお母さんは、泣かない子、愛想のない子として戸惑ってしまうかもしれません。抱っこを嫌がる赤ちゃんとどう付き合ったらいいか、お母さんが途方に暮れてしまうことがあります。しかし、成長するに従って集団・社会に参加していかなければなりません。騒がしすぎるとか、近くに接近しすぎるなど、嫌われる理由があるものです。徐々に近づくとか、手をのばして離れて手をつないでみたらどうでしょうか。
個性は将来かならず役に立つものですよ。

発達障害って何なの?

P1010326

「発達障害」というのは、“特性”とか“個性”と有名なお医者さん方は考えているようです。それは薬で治したり、手術をして悪いところを取り除くといったことはできません。一般的には、世間に受け入れられにくい特性・個性をもっている場合には、どのように育てていくか、どんな教育・指導を受けたらよいのかを考えていく必要があります。特性・個性をどのように捉えて、それをどのようにはぐくむかは、親や先生が考えなければならないことと思います。
「発達障害支援法」には、学習障害(特定の学習が困難)、多動症、自閉性障害などが入っています。特性・個性に名前をつける(診断名をつける)のではなく、どのようにその特性・個性を生かしていくかを考えることが大切なのです。
色の塗り分けにこだわっていた子どもが、やがて「ペンキ屋」の職人として自立した例があります。

 

所長のつぶやき(-発達相談とは-)

「発達相談」というのは何でしょうか

まず、「子育て相談」でしょう。「しつけ」がうまくいかない とか、オムツ(紙パンツ)がなかなかとれない とか、保育園を嫌がる など色々あるでしょう。
次に、順調に育っているかどうかの「心配ごと相談」があげられます。お姉ちゃんと比べていつまでも話をしない とか、耳が悪いのか親の言うことがわからない とか、目を離すと所かまわず飛び出してしまう などの相談があるでしょう。
そして、家族の人がどのようにかかわっていったら困っている問題が解決できるだろうかを対話します(カウンセリング)。場合によっては直接にお子様への指導を行うことがあります。
行動を観察したり、お母さんからお話をうかがったり、絵を描いてもらったり、心理検査をするなどして実態をつかみ、混乱の因となっているものごとを整理し、順を追って解きほぐす手配をすることになります。
発達相談では体の病気については扱いません。発達相談に来訪されても体の問題によると考えられる場合には、まずお医者さんに診てもらいましょうと助言することもあります。

P1010380P1010378

当所の発達相談は、すべての子どもたちが社会や学校で適切なインクルージョン(共生)が達成できるように応援することが最大の目標です。
悩んでいても時間だけが過ぎていきます。何に困っているのか、まずはご相談ください。

P1010356